不妊治療中におすすめの栄養素は?妊娠に向けた体づくりを紹介

公開:2024.1121 更新:2024.1121

不妊治療を受けており「子どもを授かるには、食事にも気をつけた方がよいかな」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
妊娠に直結するような栄養素は存在しませんが、妊娠に備えて体調を保ったり、妊娠した際の子どもの発育のために意識的に摂取したいものはあります。

今回は、不妊治療の際に摂取したい栄養素をはじめ、妊娠に向けた体づくりについて紹介します。
生活習慣を整えて、新しい命を迎えるための準備しようとお考えの方はぜひご覧ください。

不妊治療と食事の関係

不妊治療を受けている場合、今まで以上に食事には気を配りたいものです。
毎日の食事で摂取したものが、あなたの細胞一つひとつをつくり、妊娠に向けた健康な体づくりにつながっていくからです。

ただし、不妊治療に適した特定の食べ物や、特別なレシピがあるわけではありません。
食生活の基本に立ち返り、“食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを”と言われる栄養面でもカロリー面でもバランスの取れた健康的な食事を心がけることが何よりも大切です。
そうすることで、治療を乗り越え、妊娠した際には良好な状態で胎児を育てることができる体を準備することができます。

不妊治療や妊活中の食事

“不妊治療や妊活には健康的な食事が大切”というのは理解したものの「具体的には何を食べたらいいの?」と思われているかもしれません。
健康的な食事の基本は1日3食をきちんととり、栄養バランスとカロリーを意識することです。
毎日の食事では、たんぱく質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素を必要量摂取できるよう、考えて食べるようにしましょう。

また、極度な肥満は排卵に悪影響を及ぼす可能性があります。
摂取カロリーを意識するのはもちろんのこと、早食いを防ぐためによく噛んで食べ、寝る直前の食事を避けることで、肥満の予防につながるでしょう。

一方、極端なダイエットや偏った食事によっても、栄養バランスが崩れて、排卵に影響が出る場合があるためご注意ください。

普段の食事を見直したいなら、“食事日記”をつけてみるのがおすすめです。
食事日記には、朝・昼・夕の3食だけでなく、お菓子や飲み物など、1日に口にしたものをすべて記録します。
日々の食事を記録することで、不足している栄養素がわかったり、実はお菓子を食べ過ぎていたりと、改善点がきっと見えてくるはずです。

ご自身に合った方法で健康的な食事を目指し、妊娠に向けた体づくりに取り組んでみませんか?

関連記事:不妊治療中にダイエットをしても大丈夫?

妊娠に向けて摂取しておきたい栄養素

すでにご紹介したように、これを食べれば妊娠できる、という食べ物は存在しません。
とはいえ、妊娠に向けた体づくりへの取り組みとして、摂取するとよい、とされる栄養素はいくつかあります。

妊娠に向けて意識的に摂取したい栄養素
  • オメガ3脂肪酸
  • 亜鉛
  • 葉酸

ここでは、3つの栄養素の概要と妊娠における有用性をそれぞれ紹介します。
なお、あくまでも栄養バランスの整った食事をとることが前提になるため、これらの栄養素だけを摂取したり、1度に大量に摂取したりすることはお控えください。

オメガ3脂肪酸

妊娠に向けて摂取しておきたい栄養素としてまず挙げられるのは、オメガ3脂肪酸です。
オメガ3脂肪酸とは、多価不飽和脂肪酸の一種で、必須脂肪酸と呼ばれるものです。
代表的な種類として、DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)、α-リノレン酸などがあります。

オメガ3脂肪酸の有用性は、さまざまな健康面で科学的に証明されています。特に、心血管系、脳、関節、視力、妊娠・胎児発達などにおいて重要な役割を果たします。

また、オメガ3脂肪酸を豊富に含む飼料で飼育した雌のマウスの生殖機能が高齢期まで維持されたり、卵子のもととなる卵母細胞の質が改善されたり、といったことが報告されており、オメガ3脂肪酸を意識的に摂取することは、加齢による卵巣の老化を遅らせたり、高齢期における卵母細胞の質の低下を予防する可能性についても考えられています。

オメガ3脂肪酸のうち、DHAとEPAが豊富に含まれているのは、サバやイワシなどの青魚やカニ・エビといった甲殻類です。
α-リノレン酸は、亜麻仁油や大豆油、キャノーラ油などの植物油のほか、チアシードや黒クルミといった一部の植物由来の食べ物にも多く含まれています。

なお、α-リノレン酸はDHAあるいはEPAに体内で代謝されますが、その速度は非常に遅いため、最初からDHAまたはEPAが多く含まれる食べ物を摂取するほうがよいでしょう。

亜鉛

亜鉛も、妊娠に向けて意識的に摂取しておきたい栄養素として挙げられます。

亜鉛は、体内で多くの生理機能をサポートする、人間が健康を維持するために欠かせない重要な必須ミネラルの一つです。
成長・発達の促進(細胞分裂やDNA合成)、免疫機能の向上(生成と活性化)や抗炎症作用・細胞の再生・組織の修復に重要な役割を果たしており、さまざまな生体内の反応に関わっています。

そんな亜鉛は、エストロゲンやプロゲステロンの分泌を促し、細胞の正常な分裂を促すため、また活性酸素から守るための重要な栄養素で、妊活期には欠かせないミネラルでもあります。
さらには、通常の受精に必要とされたり、卵巣機能や精巣機能に影響を及ぼすこともあり、女性・男性両方の生殖能力に不可欠な栄養素と言われているのです。

そのため、特に妊活中は、女性は質の良い卵子と着床環境をつくるため、男性は健康で質の良い精子をつくるために、亜鉛が不足しないよう気を付けて摂取する必要があります。
亜鉛の推奨摂取量は、成人女性が8mg(上限35mg)、成人男性は10mg(30歳以上上限45mg)で、妊娠している場合は11mgと多めに摂取することが推奨されています。また、亜鉛も吸収率が低く、年齢とともにさらに低下するので、注意が必要です。
亜鉛を含む食べ物は、魚介類・肉類・藻類・野菜類・豆類・種実類など多くの食材があります。
特に亜鉛を豊富に含むものは、魚介では牡蠣をはじめ、うなぎやさんま、さば。肉類では牛の赤身肉、牛や鶏のレバーなど。その他納豆やゴマなどです。

なお亜鉛の吸収量は、同じ食べ物を摂取しても、その日の体調やほかの食事との組み合わせなどによって左右されてしまいます。
食べ物からの亜鉛の摂取量が足りない場合は、亜鉛含有のサプリメントで不足分を補うのもおすすめです。

葉酸

葉酸はビタミンB群に属している水溶性ビタミンの一種で、妊活中の妊娠に向けた体づくりに欠かせない栄養素です。
ビタミンB12とともに、骨髄の中で赤血球をつくるはたらきがあり、貧血を改善する効果が見込めます。

さらに、たんぱく質やDNAの合成を促進し、細胞の分裂や再生を助けるため、体の発育においても重要な役割を担っています。
特に妊娠初期に行われる、胎児の脳や脊髄の基となる神経管をつくるために葉酸が関わっており、多くの葉酸が必要とされます。
そのため、妊娠を望んでいる女性が日頃から葉酸を十分に摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害などの先天異常のリスクを低減することが期待できます。

厚生労働省によると、妊娠を望んでいるまたは妊娠初期の妊婦の方は、食事以外に1日400μg(マイクログラム)の葉酸を摂取することが望ましいとされています。
また、葉酸の働きを効果的に発揮させるには、その他のビタミンB群と一緒に働きを生み出すことが必要なので、意識して摂取しなければなりません。

葉酸を多く含んでいるのは、ほうれん草・ブロッコリーなどの緑黄色野菜やレバー、納豆、いちごなどの食べ物です。
なお、葉酸は水に溶けやすく熱に弱いため、生または蒸して食べることをおすすめします。

亜鉛と同じように、不足分に関しては葉酸のサプリメントを取り入れてみるとよいでしょう。

参照元:厚生労働省「2 対象特性 2─1 妊婦・授乳婦 P2」

参考文献:葉酸とは?卵子や妊娠・出産に与える役割を紹介

食事以外で妊娠に向けた体づくりに取り組むには?

妊娠に向けた体づくりに取り組むためには、食事だけでなく、規則正しい生活を送ることが欠かせません。
ここからは、2つの方法を紹介しますので、できそうなものから少しずつ始めて、習慣化していきましょう。

十分な睡眠をとる

妊娠に向けて体の状態を整え、体と心を休めるために、十分な睡眠をとりましょう。

個人差はあるものの、毎日6~8時間程度の睡眠時間を確保する必要があります。
休日に寝だめすると、体内時計のリズムが崩れてしまうので、夜はできるだけ早めに就寝し、朝は毎日同じ時間に起床することをおすすめします。

また、良質な睡眠をとることも重要です。
睡眠の質を向上させるためには、食事は就寝の3時間前まで、入浴は1時間前までに済ませることが推奨されています。
スマートフォンやパソコンの使用も、就寝1時間前までに終えると良質な睡眠につながるとされています。

妊娠前後は、体と心のバランスに影響が出ることも少なくありません。
良質な睡眠を十分にとり、自律神経を整えてストレスを溜めないことが大切です。

適度な運動を心がける

適度な運動も、妊娠に向けた体づくりのために取り組みたいものです。

妊娠は、女性の体にさまざまな影響を与えます。
妊娠に備えて体力をつけるためにも、運動を習慣化し、血液の流れを良くして適度に筋肉をつけましょう。

運動する習慣があまりない場合「激しいトレーニングが必要なのかな……」と心配されるかもしれませんが、特別なことを行う必要はありません。
駅や職場で階段を積極的に使ってみたり、朝に15分だけ散歩してみたりするなど、まずはできることから始めてみてください。
体を動かすことに慣れてきたら、ジョギングやヨガ、ストレッチなどもおすすめです。

ただし、どの程度の運動が適切なのかは、当然個人差があります。
特に、激しすぎる運動は体に負荷がかかりすぎて、かえってマイナスにもなりかねません。
ご自身の体調と相談しながら、無理のない範囲で運動を始め、継続することが大切です。

ストレス解消や気持ちのリフレッシュにもつながるため、ご自身が楽しく続けられる運動を見つけてみませんか?

不妊治療を受けている際は、栄養素を意識しつつ、生活習慣を整えましょう!

本記事では、不妊治療の際に摂取したい栄養素を、妊娠に向けた体づくりの一環として紹介しました。

妊娠に向けて心身の状態を整えるためには、1日3食、栄養バランスを意識したうえで、オメガ3脂肪酸・亜鉛・葉酸の3つの栄養素の必要量を積極的に摂取して、睡眠や運動にも気を配り、規則正しい生活を送るようにしましょう。

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