代理出産は日本でも可能?現状の問題点も考えます
公開:2024.04.05 更新:2024.04.05
代理出産とは、依頼を受けた第三者の女性が、依頼者の代わりに妊娠・出産することです。
何らかの理由により出産できない方が、自身の子どもを授かるための方法として知られています。
とはいえ、代理出産で子どもを望むものの「日本でできるのか分からない」「代理出産を行うにはどうしたらいいのか」と悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、日本における代理出産の法解釈と現状の問題点について考え、代理出産をする方法や流れもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
代理出産は日本では認められていない
代理出産は、日本の法律で違法とされているわけではありません。
しかし、日本産科婦人科学会が、論理的な問題を理由に代理出産に対して否定的であることから、日本国内で代理出産を行えないのが実情です。
なお、日本産科婦人科学会では、代理出産の是非について、以下のように記しています。
2.代理懐胎の是非について
代理懐胎の実施は認められない。対価の授受の有無を問わず、本会会員が代理懐胎を望むもののために生殖補助医療を実施したり、その実施に関与してはならない。また代理懐胎の斡旋を行ってはならない。 理由は以下の通りである。
1)生まれてくる子の福祉を最優先するべきである
2)代理懐胎は身体的危険性・精神的負担を伴う
3)家族関係を複雑にする
4)代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない
引用元:日本産科婦人科学会
これまでに、代理出産の是非についてはたびたび議論されているものの、民法や倫理的な観点での懸念点が多く、法律の制定には至っていないのが現状です。
そもそも代理出産とは?
代理出産とは、何らかの理由により自身で出産できない方が、第三者に依頼し、妊娠・出産してもらうことを指します。
なお、代理出産の方法は「ホストマザー」「サロゲートマザー」の2種類に大別されます。
ホストマザー
ホストマザーとは、依頼人である夫婦の精子と卵子を体外受精させ、できた受精卵を代理母の子宮に移植し、出産する方法です。
夫婦の精子と卵子を利用しているため、依頼者夫婦と生まれた子どもは血縁関係をもつことができます。
サロゲートマザー
サロゲートマザーは、夫の精子を代理母の子宮に人工授精により注入し、代理母が妊娠・出産する方法です。
サロゲートマザーで生まれた子どもは、夫との遺伝的なつながりはあるものの、妻との遺伝的なつながりはありません。
日本における代理出産の問題点
日本における代理出産は、法的・社会的な側面で、多くの課題が残されています。
ここでは、日本における代理出産の問題点を見ていきましょう。
法整備が追いついていない
日本では、代理出産を明示的に禁止あるいは許可する法律がなく、法的な位置づけが曖昧であるのが現状です。
なお、2020年12月「生殖補助医療法」の成立に伴い、代理出産を含む生殖補助医療の法整備について初めて明文化されました。
しかし、検討と法整備の目標とされた2022年時点でも実現には至っていません。
親子関係が認められない
民法772条では「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定められており、妻が妊娠した場合、婚姻関係にある夫が子の親であるとされます。
一方、民法779条では「分娩の事実により母子関係が発生する」と定められており、子どもを産んだ本人が母親になるとされます。
つまり、代理出産により子どもを産んだ場合、分娩した代理母が法律・戸籍上の母親になるということです。
そのため、代理出産で産んだ子どもを戸籍上の実子とするためには、特別養子縁組の申立てが必要になります。
倫理的な問題がある
代理出産は生命に関わる重大な決定であり、倫理的な配慮が求められます。
厚生労働省が公開した「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」には、代理出産について以下のように記載されています。
子を欲する夫婦の妻以外の第三者に妊娠・出産を代わって行わせることにあるが、これは、第三者の人体そのものを妊娠・出産のための道具として利用するものであり、「人を専ら生殖の手段として扱ってはならない」という本専門委員会の基本的考え方に真っ向から反するものである。
つまりこれは、女性の体を出産のための道具にすることへの倫理的な問題を示唆しているわけです。
なお、過去には代理出産を依頼したにもかかわらず、依頼者夫婦が、生まれた子どもの引き取りを拒否するケースもありました。
このような倫理的な問題を内包するため、代理出産が認められていないという現状があります。
【関連記事】代理出産のメリット・デメリットについて
特別養子縁組について
特別養子縁組とは、代理母との法的な親子関係を解消し、血縁関係のある子どもと同じ親子関係を結ぶ制度のことです。
前述したように、現状の法律では、代理出産で生まれた子どもは、依頼した母親の実子にはなりません。
しかし、特別養子縁組の制度を利用すれば、代理母の代わりに依頼者女性を戸籍上の「母親」として登録できるのです。
なお、養子縁組には「普通養子縁組」という制度もありますが、こちらの場合、代理母との親子関係は残ったままになります。
また、万が一子どもが亡くなった場合、代理母が相続人になる可能性もあります。
日本人が代理出産を行う方法や流れ
代理出産をするには、代理出産が認められている国で手続きを行う必要があります。
代理出産が認められている国(一部条件付き)として、アメリカ・メキシコ・コロンビア・ギリシャなどが挙げられます。
代理出産を行う流れについては、以下をご参照ください。
- 生殖補助医療サービスを提供するエージェンシーに相談する
- 代理母候補を探す
- 代理母とのあいだで代理出産契約を結ぶ
- 胚移植を行う
- 妊娠判定を実施する
- 出産前に親権手続きの準備を進める
- 出産後、子どもの出国手続きを進める
- 子どもと一緒に帰国する
代理出産を実施する医療機関や出産する国によっても、手続きの内容や流れ、諸条件は異なります。
そのため、実際に国外で代理出産を行う場合は、事前の調査が必要です。
代理出産を行う際は日本以外の国を選ぶ必要がある
子宮摘出や先天的な疾患などにより出産できない方にとって、代理出産は子どもを持てる選択肢の1つと考えられます。
しかし、倫理的な問題により、国内での代理出産は難しいとされています。
また、法律上、代理出産により生まれた子どもと依頼者である母親との親子関係が認められない場合がある、という課題も残っているのです。
そのため、代理出産を行う場合は、国外の医療機関を利用する必要があります。
ただし、国によって法律が異なるため、事前の情報収集と検討が欠かせません。
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