アメリカでの代理出産の費用は?

公開:2024.05.13 更新:2024.05.13

日本国内では代理出産が認められていませんが、どうしても子どもが欲しいと海外で代理出産を行う人もいます。合法とされている国のなかでも法整備が進み、技術も高いアメリカは人気があります。

この記事では、代理出産の概要とあわせて、アメリカでの代理出産の流れや費用を紹介します。

代理出産とは

代理出産とは、何らかの理由で妊娠・出産できない女性が、第三者となる代理母に妊娠・出産を委託することです。

日本は、代理出産が法律で認められているわけではありませんが、違法とされているわけでもありません。しかし、日本産科婦人科学会が、倫理的な観点から代理出産に対して否定的な見解を述べているために、国内で代理出産を行うことは困難です。

海外の一部の国では、代理出産を合法としているので、海外での代理出産を通じて子どもを授かった方は多くいらっしゃいます。

海外での代理出産を希望する方は、子宮要因による不妊、妊娠継続・出産が医学的に困難と医師に診断されている、などの理由を抱えている方の他、さまざまな事情を持つ方ですが、皆さん子どもを授かりたいという強い気持ちのもと、代理出産を選択しています。

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代理出産の種類

代理出産には、サロゲートマザーとホストマザーの2種類があります。

サロゲートマザーとは、代理母となる女性の子宮に、人工授精で夫の精子または第三者から提供された精子を注入し、妊娠・出産を図る方法です。

つまり、代理母には子宮を借りるだけでなく、卵子の提供もお願いすることとなります。
サロゲートマザーによって生まれた子どもは、夫と血縁関係にありますが、妻とは血縁関係がありません。

一方のホストマザーは、依頼者夫婦の受精卵、また卵子提供者の卵子、精子提供者の精子を用いて体外受精した受精卵を、代理母の子宮に注入して妊娠・出産を図る方法です。受精卵を作るのに使うのが夫の精子と妻の卵子であれば、遺伝的には100%夫婦の子どもを授かることができます。

代理出産に関する各国の法整備状況

現在、法的に外国人の代理出産が認められているのはアメリカをはじめとする数カ国に限られています。以下、主な国の法整備の状況を説明します。

アメリカ

アメリカは、世界でも最も代理出産に関する法整備が進んでいると言われている国です。代理出産に関する連邦法(アメリカ合衆国全体に有効な法律)は存在せず、州法によって定められています。

アメリカのなかでも、代理出産契約に関する制度が最も進んでいるのが、カリフォルニア州です。代理母を通じて生まれた子どもの出生証明書には、要件を満たしていれば契約者が実親、生まれてきた子が実子として記載されます。

ロシア

以前、ロシアでは商業的な卵子提供や代理出産が合法とされていました。しかし、2022年12月に代理出産に関する法律が改正されたことで、代理出産を行えるのはロシア国民の夫婦に限定されることとなりました。

現在は、ロシア人以外の外国人夫婦や、婚姻関係にないカップルは代理出産を行うことができません。また、この法改正により年齢制限が設けられ、医学的理由があることも必須条件に変更されました。

ウクライナ

ウクライナでは、外国人の既婚・異性カップルに対する商業的代理出産が認められています。ウクライナの医療水準の高さや、代理出産の費用がアメリカと比較すると低額なことなどから人気があります。

しかし、2022年2月から続くロシアとの対立的状況などにより、現在はウクライナでの代理出産の実施は難しい状況にあります。

ジョージア

ロシアで外国人に対する代理出産が禁止になったことや、ウクライナの情勢が不安定であることなどから、ジョージアでの代理出産に注目が集まっていました。

しかし、2023年6月に「外国人に対する代理出産及び体外受精のサービス提供を禁止する」と公式に発表されたことから、ジョージアでの外国人の代理出産も行えなくなりました。

未だ不透明な状況が続いているため、安心して代理出産を選択するためには、最新情報の確認をおすすめします。

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日本の状況

日本には代理出産を違法とする法律はありませんが、実質的には代理出産は禁止されている状況です。

日本産科婦人科学会が、1983年に「体外受精の実施は夫婦に限り、受精した卵子はそれを採取した女性に戻す」と定めたことで、非配偶者体外受精も代理出産も行えないこととなりました。

2003年には、改めて「代理出産禁止」としています。また、日本学術会議の生殖補助医療の在り方検討委員会(2006年12月~2008年3月開催)は、2008年4月に提出した報告書で、代理出産を「原則禁止とすべき」としました。

こうした背景から、日本人が代理出産を検討する場合には、代理出産エージェンシーを通して、合法とされている海外の国での代理出産を余儀なくされています。
なお、法律で禁じられているわけではないので、海外での代理出産を通じて子どもを授かったとしても、違法にはなりません。

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アメリカでの代理出産の費用

アメリカでの代理出産費用や医療費は、エージェンシーのサービス内容、地域や施設によって異なることがあり、代理母への報酬も経験や要求に応じて金額が上下する可能性があります。複数回の胚移植や不測の医療事情などが発生した場合、費用はさらに高くなる場合がある点も考慮しておかなければなりません。

 参照元:ニューヨーク州保健局「The Child-Parent Security Act: Gestational Surrogacy Agreements, Acknowledgment of Parentage and Orders of Parentage」

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アメリカの医療保険について

日本では、すべての国民が公的医療保険に加入しなければならない一方で、アメリカの公的医療保険制度は限定的で、民間の医療保険に加入することが一般的です。
民間の医療保険は、保険会社ごとに異なる内容が設けられていますが、個人で加入したのか、勤務先の医療保険なのかによっても、その内容は異なります。

アメリカの多くの州では“オープン・エンロールメント”と呼ばれる、年に1度だけの医療保険の購入や変更ができる期間が設けられています。
代理母と契約する際には、候補者の方が加入している医療保険の内容によって、追加で保険に加入しなければならない場合もありますので、それらへの対応がきちんとできるかどうかも事前に確認しておくと安心です。

代理出産のリスク

自然妊娠とは異なる、代理出産ならではのリスクもあります。

自身が子どもを授かるための身体的負担を、第三者に負わせるという倫理的な問題、また法的な親子関係と生物学的な親子関係が異なるなどの問題が伴います。信仰する宗教によっては、教義に反することもあるでしょう。

しかしながら、代理出産が不妊治療の大きな光であることもまた事実です。代理出産に頼るのか、ほかの手段を考えるのか、パートナーともよく話し合って決めることが大切です。

代理出産のメリット

一定のリスクをはらんでいる代理出産ですが、以下でまとめたようにさまざまなメリットも享受できます。

  • ご自身で妊娠が望めなくとも子どもを授かることができる

  • 高齢出産のリスクを回避できる

  • 成功率が高い

たとえば、子宮に疾病があり自分自身での妊娠・出産は叶わないものの、卵巣は機能しているケースの場合、代理出産であれば、遺伝的には夫婦の子どもを授かることができます。

また、代理母として登録しているのは厳しい条件をクリアした方ですので、高齢出産のリスクを避けつつ、高い確率で子どもを授かることができるのも、大きなメリットと言えます。

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代理出産エージェンシーの選び方

代理出産エージェンシーを選ぶ際には、以下で紹介するポイントを確認しましょう。

依頼費用

代理出産には依頼費用がどれくらいかかるのか、料金体系が明示されているところを選びましょう。あとからオプションと謳って追加で請求してくるようなところは要注意です。

なお、依頼費用は国や条件によっても異なります。あとから想定外の費用負担が生じるリスクを避けるためにも、料金体系についての不明点は事前に確認し、信頼できるエージェンシーを見極めることが大切です。

サポート体制

代理出産エージェンシー選びでは、サポート体制についても確認しておきましょう。

代理出産には医療用語や専門用語も多く、語学が得意な人でも、エージェントによるサポートが必要となります。代理出産の制度を熟知している人による、日本語でのサポートは必須と言えるでしょう。

エージェンシーによってサービスの種類や範囲などの内容が違うので、自分が必要なサービスを提供してくれて、安心して任せられる、と感じるエージェンシーを選ぶことが、スムーズに代理出産の旅を進められることにもつながります。

安心できるエージェンシーと納得のいく代理出産を

ここまで、代理出産とはどのようなものか、代理出産の流れや各国の状況、費用面などについて紹介してきました。

代理出産は人の命が関わるだけに、慎重に進めなくてはなりません。メリットやリスクをきちんと理解したうえで、それでも代理出産で子どもを授かりたいと希望する場合は、信頼できるエージェンシーを探しましょう。

代理出産をめぐる状況が厳しくなりつつある今、少しでも早く話を進めたほうがよいのはもちろんですが、だからといってエージェンシー選びを適当に済ませてしまうと、後悔することになりかねません。

気になることは、納得できるまで一つ一つ解決して進めることが、後悔しない旅の基本です。

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