採卵とは?そのプロセスとリスクについて紹介
公開:2024.1227 更新:2024.1227
不妊治療のうち体外受精をはじめとする生殖補助医療(ART)を行うにあたっては、“採卵”が必要不可欠となります。
どの治療のために行うにせよ、この“採卵”はその後の治療の成功に大きな影響を与えるカギとなる、と言っても過言ではないほど重要です。
採卵は、婦人科の治療でありながら「採卵手術」と言われるように、外科的なカテゴリーに入ります。そのため、処置に対して不安や恐怖を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、ARTの最初のステップとなる採卵について、基本的な情報をお伝えするとともに、リスクや注意点についても紹介いたしますので、採卵を伴う治療を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
採卵とは
“採卵”とは、排卵直前に卵巣から卵子を体外に取り出すことをいいます。
体外受精や顕微授精、卵子凍結などに必要な卵子を採取しますが、一度に複数の卵子を採取した方が患者への負担が少なくなるので、その多くは排卵前に薬剤によって卵巣を刺激し、卵子を成熟させる「卵巣刺激法(排卵誘発法)」を用いて、一度の手術でできるだけたくさんの卵子を採取することを目指しています。
卵子は、一度排卵してしまうと体外から取り出すことができないため、どのタイミングで採卵するかがとても重要になります。
また、良い状態で卵子を採取することも、タイミング同様大切なポイントです。そのため、卵子の発育状況を見ながら採卵時期を計り、超音波画像を見ながら、卵巣の中の卵胞に、採卵専用の「採卵針」を刺し、卵胞を満たしている卵胞液と一緒に卵子を吸引することで採卵します。
現在の一般的な方法では、経膣プローブと呼ばれる棒状の超音波発信装置を用いて、モニターで卵巣の様子を確認しながら進めるため、お腹を切るような手術ではありません。
採卵の流れ
採卵は、一般的に以下の流れで進められます。
- 排卵を誘発するための卵巣刺激を行う
- 麻酔を行う
- 卵巣から、卵子を含んだ卵胞液を回収する
- 採取した卵子の検卵
一般に、AMH(抗ミュラー管ホルモン)やホルモン値の測定、卵巣の状態を確認して、それぞれに合った刺激方法を用いる。 刺激の度合いが高いほど、採取できる卵子の数は多い可能性が高くなるが、その分身体的、経済的負担も大きくなる。
「静脈麻酔」と「局所麻酔」のどちらか(医療機関の方針や本人の希望による)を用いる。
経膣超音波検査により、排卵していないことを確認の上、左右の卵巣からできるだけ多くの成熟卵子を良い状態で採卵する。
採取した卵胞液は、すぐに顕微鏡を使用して、血液や卵胞液を取り除き、その中の卵子の数と質を確認する。
採卵針を刺す予定の場所や卵胞の数により、麻酔の種類や量を決めて行います。
所要時間は採取する数によっても異なりますが、一般的には15分前後です。
採卵に伴うリスクは?
採卵に伴うリスクは、まったくないわけではないものの、その頻度はそう高くありません。主に以下が考えられます。
<採卵に伴うリスク>
リスクの種類 | 症状 |
排卵誘発剤による卵巣の過剰反応。卵巣が腫れたり、お腹に水がたまる、腹痛、吐き気、など。 多くは経過観察にて対応。 | |
吐き気・嘔吐や呼吸抑制、血圧低下、誤嚥性肺炎、など。 | |
腟壁出血や腹腔内出血など、穿刺による多少の出血は、ほとんどの場合自然に吸収されてなくなる。稀に、血管の損傷などで重傷の場合には、入院治療が必要になることもある。 | |
膣内の細菌から、稀に骨盤内炎症性疾患(PID)に罹ったり、穿刺した個所から細菌が入ることで炎症や感染を起こす場合がある。その予防措置として、採卵の前後に抗生物質の投与などがある。 |
採卵後の注意点
採卵後は、1~2時間ほど安静にして、その後問題がなければ帰宅することが可能です。
翌日からは通常通りの生活に戻れますが、以下の点に注意して過ごしましょう。
- 排卵を誘発するための卵巣刺激を行う
- 当日は入浴せずシャワーで済ませる
- 1週間程度は、激しい運動や性交渉を避ける
- 無理をせずに、からだの回復に努める
感染予防のために抗生剤が処方される場合がありますので、医師の指示に従って服用してください。
もし、心配な症状がある場合には、採卵を行ったクリニックに早めに相談しましょう。