質の良い精子とは? 質を改善する方法もご紹介
公開:2025.0129 更新:2025.0129
精子の質は、自然妊娠や体外受精の可能性を大きく左右します。
男性も、ご自身の精子の状態を把握し、生殖能力について確認したいという方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、精子の質を判断する基準とされるものを説明したうえで、質を低下させる行動や、反対に高める可能性のある方法などを紹介します。
ぜひ最後までお読みいただき、今後の将来設計にお役立てください。
質の良い精子とは
質の良い精子は、自然妊娠や体外受精に非常に重要です。
では、「質の良い精子」とはどのようなものでしょう。
具体的な目安は、精液検査を行い、WHO(世界保健機構)により設定された各項目の基準値を満たしていれば、「質の良い精子」ということができるでしょう。
以下に挙げた基準値について、WHOが精液検査基準値を設定する際に用いる検査方法は、標準化されたガイドラインに基づいて行われ、それらの方法は、精液検査の精度を高め、信頼性の高い結果を得るために世界中で採用されているものです。
- 精液量:1.4ml
- 精子濃度:1600万/ml
- 総精子数:3900万/射精
- 運動率:42%
- 前進運動率:30%
- 生存率:54%
- 正常形態率:4%
ただし、この基準値はあくまでも目安として設定されているもので、例えこれらの下限基準値を下回ったとしても、生殖能力がない、というわけではありません。
“数字がこれらの値以上なら、自然妊娠の確率が上がる可能性が高い”程度に捉えておいてください。
精子の質を調べるには
正確に精子の状態と質を調べるには、精液検査を受けるのが最も簡単で確実な方法です。
精液検査は基本的に、産婦人科や不妊治療専門医院、一般病院の泌尿器科などで受けられます。
精子の質を改善する方法
スムーズな妊娠には、精子の質が重要であることがわかりました。
では、精子の質を改善するにはどうしたらよいでしょうか。そのためにはまず、毎日の生活習慣を見直すことが重要です。
一般的にすすめられている方法としては、以下のようなものがあります。
- 食事を栄養バランスが良いものにする
- 適度な運動(筋トレ・有酸素運動など)を継続する
- 十分な睡眠をとる
- 禁煙する
- 過度な飲酒を避ける
- 精巣を過度に温めることを避ける
精子の質を改善するためには、規則正しくバランスの良い食事を心掛けるのはもちろん、精子形成に必要な栄養素を摂取することも意識すると良いでしょう。
精子の形成を手助けする栄養素には、“オメガ3脂肪酸”や“葉酸”“ビタミンB12”“亜鉛”などの抗酸化剤が該当します。
また、体調が悪いと精液の質も悪くなる可能性があるので、ストレスを溜めないようにして、十分な睡眠を心掛けましょう。
精子の質が高まるとどうなるのか
生活習慣を見直し、精子の質が改善されることで、以下のようなメリットが得られます。
- 自然妊娠の可能性が高まる
- 不妊治療がスムーズになる
- 女性側の負担が少なくなる
精子の質が高まると、体外受精のための良好な状態の胚が作れる可能性も高まります。
ただし、妊娠するためには精子だけでなく、卵子の質も同様に重要です。
例えば体外受精の場合、質の良い精子と卵子で作られた胚は着床率も高く、そのまま無事に成長して出産に至る確率が高いからです。
良質な精子と卵子が受精し、質の良い胚が作られることで、妊娠率が向上します。
妊娠および健康な出産のためには、質の良い胚を作ることが何より重要なのです。
関連記事:体外受精とは?適用症例とともに紹介
精子の質が低下する原因
精子の質が低下する原因はさまざまですが、もっとも多いのは精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)であると言われています。
精子の機能が弱まる造精機能障害の35%以上は、精索静脈瘤が原因とされています。
精巣から心臓へ血液を戻す血管のことを精索静脈といい、通常は血液の逆流を防止する弁があり、逆流が起きないようになっています。
こちらの弁に不調が生じて逆流が起こり、精索の静脈が蛇行・拡張した状態が精索静脈瘤です。
精索静脈瘤ができると、精巣内が低酸素状態となり、造精機能が低下したり、精子の質が低下したりするなど不妊の原因となります。
また、造精機能には問題がないものの、精子の通る道が塞がっているか、なんらかの原因で狭くなっている精路閉塞も男性不妊の理由の一つです。
さらに、10万人に1.2~10人程度とされる奇病である、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症も、妊娠を阻む病気です。
しかしこうした病気も、適切な検査と治療を受けることで、自然妊娠、人工授精、体外受精、顕微授精とすべての方法での妊娠率と出産率が向上します。
また、流産や奇形が起こる可能性も低くなるとされています。
精液検査で異常が見つかり、治療を検討されている方は、不妊治療専門医院に一度相談してみてください。
参照元:小児慢性特定疾病情報センター
精子の質を低下させる行動
以下のような普段の何気ない生活習慣が、精子の質の低下につながることもあります。
- 喫煙
- 長時間座る、下半身を締めつけること
- 長期的に禁欲してしまうこと
- 精巣を温めること
WHOの調査によると、特に喫煙は精子の質や精液の量に影響を及ぼします。
また、奇形精子が増加してしまうので、妊活する際は禁煙を心掛けてください。
加えて長時間座りっぱなしだったり、締め付けの強い下着を着用したりすると下半身が圧迫され、精子の運動率を低下させる可能性があります。
ですので、下着類はなるべく睾丸部を締め付けないものを選び、デスクワークの方は数時間ごとに軽いストレッチを行うなどの習慣を身につけましょう。
精子の質と妊娠の可能性
今回は、質の良い精子の数値的な基準と、精子の質に関する情報を中心にお伝えしました。
男性の精液検査を行わないで不妊治療をした場合、女性の側の治療を中心にした治療方針が進められていくでしょう。
けれども、不妊治療を行うご夫婦のうち、不妊の理由の約50%は男性側に原因があることが明らかになっています。不妊症では、ご自身の自覚がほとんどない場合が多く、男性も精液検査を受けて初めて不妊症が発覚するケースがほとんどです。
したがって、男性の精子の質を調べ、不安があれば女性側の婦人科の治療と一緒に治療することができるようになると、不妊治療もスムーズに進みます。
精液検査のデータには、目安となる下限基準値が設けられており、その数値はインターネットでも簡単に調べることができます。
万一、精液検査で異常が見つかった際は、男性不妊治療専門病院を受診し、できるだけ早く治療に取り組むことをおすすめします。
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